横浜を着替える

 5月13日はUDCY(横浜アーバンデザイン研究機構)のシンポジウムに行ってきました。


「UDCY横浜アーバンデザイン研究機構」は横浜市の将来の社会構想、環境、空間のデザインを研究・創造する団体として昨年春にスタート。


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UDCYが横浜の未来社会を設計するシンポジウム-バンカートで開催 - ヨコハマ経済新聞

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 特定地域における人と人の繋がりを考える上で、例えば道路や建物などからつくられる「街」の物理的な設計や、そこを「移動=歩く、自転車で走る、etc」といった肉体的な行為や体験の設計について考える貴重な機会。

 また、E・レルフのいう没場所性を食い止める都市空間設計、そのモデル地区としての横浜の可能性について考えさせられました。特にみなとみらい臨海部における各地域キャラクターの歴史的な経緯を踏まえた上での戦略的な場所性の洗練とデフォルメ、及び各地域間のモビリティに関して。

 具体的には、馬車道、関内、野毛、みなとみらい、元町など、比較的狭域に、それぞれキャラクターを持った地域が互いに隣接しているというアドバンテージにもっと敏感たれという話がありました。
 ここでの焦点は各スポットの個性そのものではなく、スポットとスポットの関係、スポット間を個人が移動することであたかも服を着替えるかのように、彼の意識がスイッチするような時空間設計を論じるということ。

 これはポストモダン的個人のライフスタイルモデルが伏線になっています。すなわち、共通のインフラをベースにしながら多様な趣味嗜好を持ち、多様な組織に所属し、時々刻々とそれらをスイッチして生きる“われわれ”。

 流動的なライフスタイルに対応した流動的で平板な都市に退屈する前に、少なくとも狭域ではエントロピーを低い水準で抑えながら区分けしつつも、その内部を移動することで、流動的な体験を各地域から場所性をダウンロードする形で享楽できるような戦略的なまちづくりが可能ではないかという発想。

 最近黄金町という物理的な空間について考える機会ができそうで、横浜という地域とその中の一地域という大小関係、及び隣接地域との並列関係についても考えていくと非常に面白そうだと思っています。


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APMLから、興味の更新とその可搬性を考える (2)

 前回の記事に早速言及頂いたので考えが揮発しないうちに続きを書いておきたい。

APMLによって、自分に興味のある情報が勝手に届く仕組みが実現されるわけだけれど、その便利さを享受しながらも、自分の世界を固定化するのではなくて、どんどん広げて行けるような仕掛けも欲しい。


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APMLに考える個人の符号化という話 - WebGrove

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 自分の興味が攪拌/更新され、世界が広がるサービスというのは間違いなく魅力的だが、そういった経験はある種のアクシデンタルな性格を帯びるはずだ。ゆえに、そういった経験を“期待してサービスを利用する”時点でそのアクシデント性は減耗してしまうという問題を孕んでいる。

 このような問題に対して『計算不可能性を設計する』において宮台真司は、
ノイズやアクシデントを許容するアーキテクチャを設計する時、「期待通りのハプニングという非ハプニング」の逆説をどう脱パラドクスするか (P212)
と提起した上で、アーキテクト(設計者)の設計に際する姿勢に関し、
アクシデントが続くべきだとしても、同じアクシデントの反復だと見做されないように、絶えずアーキテクチャを更新し、新たな期待の地平をつくり、先回りして期待を破るべきです。 (P213)
と述べている。
 
 アクシデント以前の「個人の興味にマッチする」という段階においても(今回の文脈に限定すれば)今だ極めて単純なアルゴリズムと仕組みしか持たないAmazonやGoogleがこのトピックの先行事例であることから、マッチングとは別に「新たな期待の地平をつくる」ことを同時にカヴァーする(ウェブ)サービスというのは当面出てこないと考えてよさそうだが、結局必ず直面する問題ではある。

 APMLの描く方向性として、サービス横断的に興味関心情報を送受信していくことで、プッシュされる可能性のある情報もジャンル横断的に増加し、それに伴い上で言う「期待通りの」アクシデント性については早晩拡張することができるだろう。その次のフェーズとして、絶えず肯定的な意味で期待を裏切り続ける設計に耐えるAPML(かその代替)自身のアジャイルな更新(再設計)が見えてくる。

 つまり、(これは完全に感覚的な意見だが)おそらくアーキテクチャ自身がその設計を設計し続けることでユーザーに対してアクシデントを提供する(といった設計をアーキテクトが行う)ことになっていくだろう。これは例えばAI(人工知能)分野にヒントがある気が直感的にするのでまた追って考えていきたい。


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APMLから、興味の更新とその可搬性を考える

 以前フィードアグリゲーターをBloglinesからlivedoorReader(LDR)へスイッチしたのは、各フィードごとに重み付けができる「レート」機能と、ショートカットキーの充実がポイントだったし、後発ながらそういった評価(+軽快な挙動)によって乗り換えユーザーを多く獲得していった経緯があったと記憶している。

 APMLはLDRの「レート」機能のような実装を汎用的に定義し、ユーザーが明示的に自分の興味をプログラムに伝える一方で、アプリケーションレベルで自動的かつ継続的に個人の興味の更新(変な言い方だが)していくことができるようになる。
 そしてそれに応じた情報の提示をしていく可能性をひらく(XMLSchemaによるAPMLの構造定義では自動収集されるimplicitデータとユーザー任意のexplictデータを区別している)。


 今現在LDRのレートはフィード登録時、あるいは登録編集画面で任意に設定するexplicitな仕組みになっているが、フィード参照回数、記事参照回数、記事リンク先訪問回数などは履歴として取得できるので、今の実装でもLDRローカルで自動レイティング、及び関連フィードや記事の提示が可能だ。
 これはAmazonの「おすすめの商品」機能と「この商品を買った人はこんな商品も買っています」機能に準えて考えることもできるだろう。implicitな興味(それが本質的な興味かどうかはわからないが)を自覚させられる局面はAmazonやGoogleによって既に我々は多数経験している。

 APMLによって蓄積&書き出される個人の興味情報は、フィードのインポート/エクスポートの際使われるOPMLファイルのようにXMLベースのAPMLファイルとして持ち出すことができる。


 また、「興味の鮮度」を考えたとき、アプリケーション層では正の興味だけでなく負の興味も捕捉しながら、ユーザーの興味関心を快いレベルで攪拌するような巧妙な情報提示を行っていくようになるだろう。これについては今後もう少し展開したい。 


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